前提:文字起こしは副業向きの仕事ではない
副業ではなく、本業(育児中などの方のパート代わりも含め)としての在宅ワーク・文字起こしの仕事の話です。
文字起こしが副業向きの仕事ではないと私が思う理由はたくさんありますが、話すと長いのでまたあらためて書きます。
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文字起こしはAIに取られる仕事なのか
「文字起こし(テープ起こし)やデータ入力のような単純作業は、将来的にはAIに取られてなくなるだろう」
これは、NottaやGoogle音声入力、ChatGPTが話題になる前から久しく言われていることだが、はたして本当にそうなのだろうか。
完全在宅ワーカーとして文字起こしを生業としている私は、それは半分は正しく、半分は誤りだと、個人的には考えている。そして、それなりの単価を適正報酬としていただけている文字起こしライターがこなしていることは、はっきり言って単純作業をしているわけではない。
※上記『WITH TEAM』さんも本当にミニマルなプランで120円からです。
現役テープライターが思うこと:文字起こし関連の案件はむしろ激増する?!
自動文字起こしソフトやアプリが普及すると、テープ起こしの作業効率はもちろん大幅に上がる。
しかし、テープライターの仕事はなくならないどころか、むしろかたちを変えて激増すると、私は思っている。その理由を、述べていく。
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日本語という言語の特徴と文字起こしの関係
まず、日本語には以下の特徴がある。
• 主語や目的語を省略できる。
• 漢字・平仮名・片仮名が混在している。
• 同音異義語がある。
• 漢字に音読みと訓読みがある。
• 敬語・婉曲・オノマトペ等、表現のバリエーションが豊か。
• 方言の種類が多い。
• 語族系統で分類不能とされており、独立した特殊な文法構造を持っている。
これらの特徴を持つ日本語は、自動反訳(文字起こし)や自動翻訳がとりわけ難しい言語だと言われている。
また、AI文字起こしが苦手とすることとして、最新情報、特に専門家がまだ少ない分野の音源を的確に起こせないことがある。
さらに、発話被りやノイズが多い音源、脈絡に乏しい会話(雑談等)では反訳の精度が大きく下がることも、自動文字起こしAIの弱点として挙げられる。
これらをふまえて、日本語という、成り立ちとして独立している上に世界的に見てユーザーが少ない言語の、その数パーセントの精度を追求することが、はたして実用向け自動文字起こしシステムやAIを開発する費用対効果・労力対効果から見て、本当に生産的なことなのだろうかと個人的には思うのだ。(研究対象としてなら分かる)
文字起こしの仕事は、多分将来も残る。ただし、形がかなり変わる。
実際、自動反訳・翻訳エンジンの開発のみを長年追求してきたあるIT企業の営業の方によれば、日本語の場合、自動文字起こしの精度は、90%程度からずっと上げられていないとのことだった。
外注にお金がかかるために眠らせていた音源を、自動文字起こしAIにかける人が増えるほど、 AIが間違えている数パーセントの箇所を修正する仕事や、文章を記者ハンドブックに倣って整える仕事は増えるだろう。
完全自動化がすべてではなく、人力と組み合わせることが結局のところ最適解となる場合が、世の中にはわりとあると私は思う。
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文字起こしの在宅ワーク、今から始めても意味がない?
少なくとも直近数年では、従来とは少し違ったかたちで、文字起こしの関連業務が増えると踏んでいる。
自動文字起こしAIを活用できる知識を持ち、かつ、ライティングの基礎を覚えることは、在宅ワーカーになりたい方にとって、今からでも結構悪くない選択肢なのではないだろうか。
文字起こしの作業自体は、音を聴けて、キーボード操作とワードの基礎ができればできる(時給換算の報酬を上げるためには修練と工夫が要る)。
また、それほどスペックが高くないパソコンひとつで、お金や特別な道具がなくても始めることができる仕事のひとつだ。パソコンにまだ慣れていないけれど在宅ワーカーを目指したい方にとって、最初に挑戦する仕事として好適だと考えている。
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クラウドソーシングで『おためし』するのも良いと思う。
採算がとれる気がしなかったり、仕事として合わなければすぐにやめられる。
もし性に合う場合、堅実なパート程度の報酬(実働時間に対して時給換算で1000円以上)まで持っていくことは難しくない上、手堅い印象の職歴にもなるので、いざAIに取られる時が来ても次の手が打ちやすい。
ただし、他の一般事務に括られる仕事と同様、例えばIT・クリエイティブ等の仕事に比べたら報酬の相場は低く、報酬を上げても天井はわりとすぐくる。
また、AIの台頭で大きく変わる仕事であることは間違いない。
文字起こしに限らず言えることだが、その仕事をずっとやる必要はない。
報酬や存続に不安を感じる場合、次のことを考えれば良い。始めやすく、適性があれば手堅い仕事(適性はどんな仕事にもある)になる。
少しやってみてもし性に合っていた場合、文字起こしスキルが身に付いたらそれをベースに、関連業務を請け負ったり、自分で仕事を作れるようにもなる。
守備範囲を少しずつ増やしていけば、報酬を上げる工夫ができることは、他の業種のフリーランスや会社勤めの方と同じだ。
※ただし、雇われていないということは、考慮すべき重要な違いだとは思う。
関連業務を展開するなら、AI文字起こしの精度を上げるアドバイス・設定代行・字幕作成・議事録作成・教師データ作成・リライト(文字起こしからのコンテンツ作成)・デジタルサポート・在宅ワーク相談など、私も掛け合わせることができた。
文字起こしは楽しい!
自動文字起こしAIを活用できる知識を持ち、かつ、ライティングの基礎を覚えることは、在宅ワーカーになりたい方にとって、今からでも結構悪くない選択肢なのではないだろうか。
パソコンにまだ慣れていないけれど在宅ワーカーを目指したい方にとって、最初に挑戦する仕事として好適だと考えている。AIに取られる可能性がある仕事でも、すぐできることでやってみたいこと、かつ、まだAIに取られていない仕事であれば、期限を設けてやってみたら良い。
何より、文字起こしのお仕事は、すごく面白いですよ^_^
参考書の紹介
『記者ハンドブック 新聞用字用語集』
新聞など、記事の書き言葉において、共同通信社が望ましいと推奨する表記である『新聞表記』をまとめた用字用語集。
国語辞典や漢和辞典とはまた違う意味を持つ本です。
文字起こしをやるなら(副業であっても)記者ハンドブックを使えるようになったほうが、受注できる案件の幅も広がり、単価アップも狙いやすいため、おすすめしています。
『文字起こし&テープ起こし即戦力テキスト』『文字起こしスキルアップ問題集』
中古だとダウンロード教材がダウンロード済みの場合があるため、新品の購入をおすすめしています。
人気の本なので、値崩れもしません。
『文字起こし技能テスト 公式テキスト』
文字起こしの仕事をやる上で必ず必要な資格ではありませんし、一般教養、表記ルール、基本スキル(ファイル・専用プレーヤーの扱い、タイピング、検索テクニック)のみに内容が振っているため、これだけで即実務がこなせる印象はないです。
でも、反訳専門の会社等を受ける時、未経験の方の勉強した証明として役立つ検定だと思いますし、実際、『850点以上歓迎』という求人はよく見ます。
私も自分が発注する側のときに、未経験であっても文字起こしの仕様や表記ルールにまつわる用語が説明抜きで通じる方、国語力がある方と認識するので、ご興味があればと思います。
経理のために簿記を勉強したり、事務のためにMOSを勉強して、教科書的なことは抑えたけれど、実務は勤め先から教育されないことには必ずしも分からないといったイメージで良いかと思います。
あとがき:文字起こしがAIに取られるとすれば
本当に文字起こしの仕事がAIに取られるとすれば、直近では私たちのようなテープライターがこなしてきた仕事は必要ない上に、中身を知っているわけでもない業種の人々の軽い発言が、結果としてこの仕事の価値のおとしめにつながってしまっているパターンだ。
自分の必要の範囲でAIを使って『これで十分』『文字起こしのような誰にでもできる仕事はもう要らない』と言うことによる、風評被害だ。前者はともかく、後者については知らないことに余計なことを言うものではないと思う。もちろん、前者については良いことだ。
どんな仕事でも、職業としての報酬の相場は、実際の業務内容や専門性ではなく世間的イメージに振り回され、ときに簡単に失墜するものだ。さらに、こういう行いにより、新規で文字起こしを頼もうとする方が、文字起こしとはすべて単純作業であり、どんな案件でもAIで工数が激減するものだから安く頼んで良いと思い込んでしまうことも困る。
あとは、クライアントの良心と予算によるところが結局は一番大きい。個人的には、業務委託で生身の人間に外注する以上、どんな業種であっても内部スタッフと同等以上、または習熟したときの時給換算が少なくとも最低賃金以上の報酬になるよう設定せざるを得なくなる(せめて努力目標)法律・世論が必要だと考えている。
予算的にそれができないのであれば、せめて初心者を教育して実績とスキルをつけてあげ、かつステップアップできるよう、縛り付けないであげてほしい。安すぎる報酬で、教育しなくても即戦力が手に入ることを当然と思っては良くない。ワーカーもクライアントも疑問を持ったほうがいい。
今は皆たいへんなのだから、個人に文句を言おうとは思わない。現状の枠組みでそれが合法的にできる以上、今現在、とくべつ報酬が高い職に就いているわけでもないのに、他者に手伝いを頼む際に適正料金を律儀に払おうとするなら、そういうまじめな人ほど貧しくなっていってしまう。
でも、クラウドソーシングサイトが、そういった感覚が当然の場ではなくなるよう、時代が進んでいけば良い。そのあたりについて、クラウドソーシングサイトを運営する会社さんは、本当に努力されているといちユーザーとして感じる。問題は、ユーザーの総意と行動のほうだ。払えないことと、自身は人並み以上の暮らしができる収益を出しているにもかかわらず、それを支える下請けに対して、適正報酬どころか最低賃金レベルの額すら出さないこととは違うのだから。